スピーキング力はこう伸ばす
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肩書はインタビュー時のものです
一番の原因は、日本の英語教育では「話す」機会が少ないことでしょう。例えば私は、アメリカの大学で中国語を学び、3年後には中級レベル(中検2級レベル・ACTFL OPI Advanced Low)に達しています。入学時はまったく中国語が話せず、授業は週3回のみ。それでもここまで力を伸ばせたのは、授業中は英語禁止、ランチの時間は中国語クラスのチューターと同じテーブルに座るなど、中国語を話さざるを得ない機会を多く与えられたからです。
最近は日本の学校もスピーキングの授業に力を入れるようになってきたので、私が授業を担当している大学の学生などは、すごく流暢に話しますよ。どこで習ったの? というような単語を使いこなしていたり、プレゼンがすごくうまかったり。
でも、話せればいいかというと、決してそうではありません。私から見ると、今の学生は流暢に話せる一方で、間違いも多い。これは中高の教育が「話す」スキルを重視し、言葉使いや文法のチェックを後回しにした結果だと思います。
そうです。特に気になるのが、TPOに合わない言葉遣い。講師の私に対しても友だちのように話しかけてくる学生には、「それだけ話せるんだから、次は場面や相手に合った話し方を考えよう」と、伝えています。英語初心者ならば、敬語や丁寧語が使えなくても、例えば「おかけ下さい」と言うべきところを「そこに座ってろ」なんて命令形で話しかけてしまっても、相手は寛大に受け止めてくれるでしょう。でも、ある程度英語が話せる人の場合、 TPO に合った話し方ができないと、単に「失礼な人」と捉えられてしまいます。
学習のゴールを2段階に分けて設定するといいと思います。初めはアウトプットをスラスラ流暢にするというゴールで、次がTPOに応じた立ち振る舞いを身に付けるというゴール。1つ目のゴールは個人でも学習できますが、2つ目のゴールについては、それがビジネスシーンにふさわしい表現なのかをチェックするネイティブスピーカーやグローバルビジネスの常識をよく認識している人の手助けが必要です。
同じスピーキングでも、どのような場で英語を話せるようになりたいのかによって、身に付けるべきスキルは異なります。早くゴールに近づくためには、学習者の目的が日常英会話なのかトラベル英会話なのか、それともグラフなどをプレゼンで自分の考えを伝える力なのかを具体的にすることが大切です。
ただし、日常会話ができない人がいきなりプレゼンテーションや会議向けの練習をするのは無理があります。学習のスタート地点は、目的と現在の英語レベルの掛け算で決めるもの。目的がなんであれ、基礎的な英語力が不足している場合は、まずそこから始める必要がありますね。
CEFRやCEFR-Jは、いわば「共通物差し」のようなもので、上手に用いれば企業側、社員側双方にメリットがあるでしょう。例えば、海外駐在に必要な英語力を、特定のテストスコアではなく「CEFRのB1」と規定しておけば、社員が受けられるテストの選択肢も広がりますよね。
ただし、CEFRは“Can Do statement” 、つまり、「このレベルの人は、概ねこういうことができます」という内容を定義したものであり、そこにリストアップされたすべてをできるという意味ではありません。その意味で、CEFR, CEFR-Jはその人の英語力のあくまで「参考値」であることを、理解しておいて下さい。
全ての社員に一定以上のTOEIC®スコアを求めるような企業では、CEFRの認知度も高いですが、昔ながらの企業、例えば20年前の管理職昇格要件をそのまま運用しているようなところでは、まだあまり知られていない印象です。
とは言え、最近はオンラインで海外とやりとりをする機会が増え、多くの企業が社員の英語力を正しく把握したいと考えていますから、今後状況は変わるはず。英語力を測定・評価する過程のどこかではCEFRの情報に触れざるを得ないので、今はまだCEFRに馴染みのない企業も、それぞれに適した方法でCEFRを導入していくでしょう。
受験者にとって、有用な機能だと思います。ETSやケンブリッジなどのテスト運営組織は、テストの先の学習プログラムにはそれほど力を入れていませんから、テストと学習内容を連携させつつ、テストで判明した「弱点」を克服するレッスンを提供できるのは、御社の強みではないでしょうか。
また、PROGOS®にはグラフをみながら説明するタスクのように、仕事に直結している内容も盛り込まれているので、プレゼンテーションのような場で英語でさまざまなデータについて説明するスキルを知りたい場合にも、役立ちそうですね。