~効果的な英語研修の設計とは?~
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肩書はインタビュー時のものです
スピーキングがリスニングやリーディングよりも難しいと感じるのは、当然だと思います。まず理解していただきたいのは、「話す」という行為は、とても複雑だということ。例えば2者間の会話では、相手の言葉を音としてキャッチして、質問の意図やキーワードの意味を捉えて、それに対する適切な返答を考えるという一連の作業を、瞬時に行わなければなりません。それが英語の会話ならば、さらに自分の考えをどのように英語で表現するかを考えたり、発音や文法に気を付けたりする必要もありますからね。
ビジネス向けの会話教本を使って定型表現を覚えれば、ある程度のやり取りには対応できるようになるでしょう。そういった練習も大切ではありますが、定型表現だけ覚えていても会話は続きませんし、そもそも社会人が英語を「話せる」と言うからには、話の内容も充実している必要があります。ビジネスシーンでは、主体性を持って話し合いに参加し、適切な語彙と発音で自分の意見を主張できて初めて英語が「話せる」と言えるんです。
ビジネスパーソンの場合、英語のスピーキング力はもはや誰もが身に付けておくべき必須スキルです。以前、大手メーカーの人事部長を大学にお招きし、ビジネスシーンにおける英語力の重要性について講演をしていただいたところ、講演後の質疑応答で一人の学生が「英語よりも、話の内容や経験の方が大切なのではないか」と質問をしました。するとその方は「英語しか通じないビジネス環境では、『英語を話せない=能力がない』とみなされます。アウトプットされない能力に、給料は払えません」とはっきりお答えになった。これこそが、企業の本音でしょう。これからの時代、英語のスピーキング力はビジネスパーソンの必要条件であり、企業の人材育成要件と捉えるべきです。
企業研修の設計では、心がけていただきたい点が2つあります。
まずは長期的な視点を持つことです。研修の企画担当者が変わったら、プログラムの内容がまるで変わったということ、よくありますよね。担当の方にはそれぞれの考えがあるわけですし、変えることの意義も理解できますが、より良い研修プログラムを提供するためには「積み重ねの作業」が不可欠。どんな素晴らしい研修会社でも初めから100%完璧とはいきませんから、研修担当の方はプログラムの作り手側と意見交換やネゴシエーションを繰り返しながら、研修の質を上げていきましょう。
もう一つは、学習サイクルを意識することです。語学学習は、Practice(個人学習)、Interaction(対話的学習)、Communication(実践)の3つで構成される「PICサイクル®(ピックサイクル)」をいかにうまく回すかがポイントになります。ビジネスパーソンの場合は、 移動時や週末の勉強を Practiceに、 研修をInteractionに、 実際のビジネスシーンでの英語のやりとりを Communicationに当てはめて考えてみてください。日々の学習や研修で身に付けた知識は、実際の仕事で使ってみる。実践で使えなかったところは次の課題として、また個人学習・研修から始める。この作業の反復で、スピーキング力はもちろん、英語力全体を底上げできるんです。
研修のメリットは、1対1での対話練習など一人ではできない内容を網羅できる点ですから、音読やリピーティング、シャドーイング、問題集を解く作業のように個人でもできる練習を敢えて研修の中で行う必要はありません。個人学習と研修をうまく使い分けられれば、PICサイクルにそった効率よい学習が可能になります。
ディベート、ディスカッションの活動をぜひ取り入れてほしいですね。ただし、その際は必ず、社会人の会話にふさわしい「意味のある話題」を取り上げること。時事問題や旬のニュースについて英語で意見を交わす練習は、英語力だけでなく思考力の訓練にもなります。英語力が高くてもその話題についての知識や考える習慣がなければ意見を述べられませんから、この2つを同時に伸ばすことはビジネスパーソンが英語を学習する上でとても大切です。
また、研修担当の方にぜひ行っていただきたいこととしては、個人学習の支援もあります。個人学習の目的は、英語を使って話したい内容とビジネスシーンで使える英語表現の「融合」です。その点を踏まえて、受講者の業務に関連したリーディング教材やフレーズ集を紹介するなどの適切なサポートを行えば、個人学習の質も、それに続く研修の効果も高まります。今はウェブ上にもいい学習素材がたくさんありますから、ぜひ活用してください。
私はスピーキング力も含め、英語力を伸ばす3要素は、「モティベーション」と「学習時間」︎「学習法」だと考えています。学習意欲が高まれば、日々の勉強時間も増えるし、学習法の幅も広がる。モティベーションの維持は、学習者にとって重要な課題です。モティベーション高める方法はいろいろあるでしょうが、研修の前後にテストを受けて違いをチェックするのもいい方法です。
スピーキングテスト、PROGOS®を使えば、「表現の幅」や「流暢さ」といった項目別に力の伸長度を把握できるので、学習意欲を高めつつ、自分の苦手分野も見極められる。これは学習者にとってメリットですね。また、PROGOS®もそうですが、テストの中にはCEFR、CEFR-Jといった国際基準に基づいて結果の評価をしているものがあります。このような基準に照らして学習者が自身の英語レベルを客観的に把握できれば、モティベーションの維持や学習のプラン作りにも役立つでしょう。